包丁ができるまで

 大月刃物工場では、1本1本の包丁を手作りで作っています。
ここでは、安来鋼を使った菜切り包丁を例に、包丁の作り方をご説明します。

素材解説

たたら製鉄の伝統を受け継ぐ

「安来鋼」

 古来より高品質な鋼として知られている「安来鋼」を適切な温度で鍛造、焼鈍、焼き入れ、焼き戻しを施すことでよく切れ、長く使える刃物が出来上がります。
「安来鋼」にはいくつもの種類が存在しますが、大月刃物工場では主に刃の薄い菜切包丁や切出しナイフには「青紙」、出刃包丁や鉈など刃の厚みを必要とするものには「白紙」を使います。

材料の切り出し

 あらかじめ鉄と鋼を組み合わせてある素材を、必要な長さに切断します。

鍛  造

 切り揃えた材料を焼き、ベルトハンマーで素早く叩いていきます。
 まずは持ち手となる柄の部分、次に包丁本体をハンマーの種類を変えながら効率よく、一気に薄く叩いていきます。
 それぞれの包丁に合った寸法、厚みまで叩いた後、火を落とした炉の中に入れ一晩かけて常温までゆっくりと冷やしていく「焼鈍(焼きなまし)」という作業へ進みます。この作業を行うことで包丁内の鋼の組織を均一にすることができます。

  • 鍛造(1)
  • 鍛造(1)
  • 鍛造(1)
  • 鍛造(1)

生打ち、中子伸ばし

 丸一日焼鈍して、加工しやすくなった刃を叩いて、反っていたところを平らにしていきます。曲がっていた中子(柄に挿す部分)は、ハンマーで叩いてまっすぐにします。

切断・刃付け

 型を使って寸法と形を整え、同じになるように切りそろえます。刃に「大月」の刻印を入れてから、グラインダーで形を整えます。

焼き入れ

 粘土、炭の粉に石灰を混ぜた泥を塗って乾燥させた後、予熱炉で熱します。その後、790℃に保たれた本炉で約4分、全体の温度を均一にさせます。本炉で加熱した鉄を水に入れると、水が「ゴワッ」と悲鳴を上げます。焼き入れは、刃物の良しあしを決める重要な瞬間。水の温度は冷たすぎても、暑すぎても良くありません。適度な温度を保つために、微調整をしながら作業します。

焼き戻し

 焼き入れが終わった刃は、160℃くらいに温めた焼き戻し油に付けておく「焼き戻し」へと進みます。そうすることで粘度が増して刃こぼれしづらくなります。焼き戻しが終わった刃は黒く色が変わります。

研  ぎ

 回転砥石で刃を研いでいきます。荒いものから、だんだんと細かいもので研いでいき、防錆ニスを塗って仕上げます。

柄  付

 柄を付けて、完成です。